小林聡子の終わり

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「小林大丈夫か。その。バカバカ言って済まなかった。まさか鼻血が出るまで泣くとは……ほら、コーラにソーダにファンタ買ってきた。好きなのを飲め」 「ふぁい……」 なんで全部炭酸なんだ。 それは炭酸が──恋は炭酸の如く弾けたなとか。そんな隠喩暗喩を使っているのか。この国語教師めとか思ったけれども。 教室で黒部ダムもドン引きのレベルで目から涙を放出して、さらに興奮して鼻血まで放出してしまった。 先生はそんな私を抱き抱えてソッコー涼しい保健室に運んで横に寝かせてくれた。 そして今に至るわけだった。 だから、一応は感謝している。 涙も鼻血も止まって、ゆっくりとベッドから上体を起こしてやや、顔を上に向けて。鼻をティッシュで抑えながらファンタに口付けた。 そうすると咽せた。 「ぶっ、ごほっ」 「バカっ! そんな飲み方するからっ!」 先生は慌ててティッシュケースごと私に手渡してきて「落ち着け」と慌ていた。 またバカと言われてしまった。 むしろ、やっぱり炭酸を買って来た先生の方がバカなんかじゃないかと思ったが。振られて夏の空に駆け出そうとしてしまった私の方がバカだと思い、口を噤んで呼吸を整えることに専念した。 本当に私、終わってるなと思った。 (本当なら。告白が成功して帰りに仲良くパピコを半分こする予定が……いや、以前にもう半分こしてた。だったらグレードを上げて雪見だいふくにして……いや。それもやっていたな……) なんだ。 私、最初からもう全部終わってた。 そんな事すら気が付かないバカだから、こんな結果になったのかと思うとまた涙がでて来そうになった。 「小林。こう言っちゃなんだが。その、本当に振られたのか? あの、見た目も気質もクールな浅野が。人と距離を置きまくりの浅野が。唯一お前のお節介パワーに押し負けて良く喋っていたじゃないか」 先生はパイプ椅子に腰掛けて、コーラを飲み始めた。 「ぐすっ。その説明だと私がお世話で、勘違いして振られた要素しか見出せないです……」 そうじゃないと、私は弁明をし始めた。
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