小林聡子の終わり

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保健室のクーラーは快適で随分と落ち着いた。 しゃりっとした白いシーツを握りしめて喋る。 「浅野って、なんか転校しまくりで。最初から『人付き合いは苦手です』って言って。春に転校したきたじゃないですか」 「そうだな」 「それが、私の飼っている元野良猫のワンタの目とそっくりで。拾う前のワンタみたいで。それでなんかほって置けなくて。浅野カッコいいし。ワンチャン行けたらいいなって」 「猫にワンタにワンチャンとかややこしいが、うん。続けてくれ」 「はい。それに折角だからクラスメイトになったんだから仲良く出来たらいいなって。そう言う私の可愛らしい思いもあって」 「先生。小林のそう言うところは凄くいいと思ってる」 先生がそれにしても青春だなぁとか、呑気な感想を言っていたが、その青春は先ほど終焉を迎えている。 先生は今年の春に結婚しているから、そんな呑気な事を言えるんじゃないかと思ってしまった。 とりあえず、新婚リア充爆発しろと思いながら話を続ける。 「で、色々と学校の案内してたり、ノートの板書をやってあげたり、購買のパンを買ってきてあげたり、掃除当番変わったり」 「お前……上手くパシらされていたんだな……」 「そんな事ないです。浅野はいつも『私にしか頼めないと』言ってくれました」 「浅野恐ろしい男だ。同じ男として将来が心配だな……」 「はい。心配で。いつも購買のパンばっかりで。聞いたら両親が仕事で忙しいからって。だからお弁当作るとかはちょっと面倒なので、ワンタと同じように家のご飯あげたらいいかなって。浅野のスマホを強奪して家の夕食に招きました」 「お前達本当にお似合いだよ」 私もそう思ってた。 打てば響くようになんだかんだで会話してくれる浅野。 料理上手のお母さんの料理を凄く気に入ってくれて。スマホを強奪しなくてもそのうちに家に来てくれた。 そして。私がイケると王手を掛けたと思ったのが、夏休み前に浅野の家にお招きされたコト。 それはワンタがお気に入りのおもちゃを、私に差して出してきてくれた感動とよく似ていた。
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