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「先生、ではくれぐれも宜しくお願いしますよ」
そう言って、高木は電話を切った。
相手は与党民自党幹事長の荻畑である。
荻畑は民自党で最大派閥を形成する荻畑派の領袖で、現在党内で最も力を持っている国会議員の一人であった。
総理の沖川も最大派閥の荻畑派に反対されると党内運営が出来なくなる為、荻畑の要求には応えざるを得ない。
もっとも、沖川自体、総理に成れればそれでいいという人間であり、政策自体には殆ど興味がなかったし、実際何も分からなかった。
周りの言う事をただその通りにやっている。
沖川本人は、そんな自分の姿勢を「聞く耳を持っている総理大臣」と自称していた。
そんな言葉で国民を騙せると思っている辺りは如何にも世襲で国会議員になったボンボンらしい。
そんな政府を巻き込んで大仕事をする為には沖川では駄目で、何としても荻畑の力が必要だった。
そして荻畑には充分に実弾(現金)を打ってきた。
次か若しくはその次の総裁選で間違いなく総理に成れるような道筋もつけてやった。
全てはこれから世界的規模で繰り広げられる高木の会社の販売戦略である。
日本だけそれに乗り遅れる訳には行かない。
むしろ、日本は最重要顧客になるよう計画されているのだ。
ここで失敗は許されない。
高木は決意を新たにした。
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