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世界中がそのワクチンを求めて争奪戦を開始した。
先進国が買い占めたとか、白人たちが買い占めた、在庫が切れている、供給までに一年以上待たなければならないなど、人々を不穏にさせる様々な報道が世界を飛び交った。
この不安の連鎖には世界中の人々に一層ワクチンを求めさせる効果があった。
高木の元にはワクチンの完成が報道される二週間前には厚生労働省から連絡が入っていた。
高木は予め会社で策定されていたプロトコルに沿って契約の話を進めた。
伝染病発生前に開発していたとはいえ、まだ実証試験は十分に行われていない。
このワクチンを接種した人がその後遺症で何かあっても、責任は会社ではなくワクチンを認可した国が取るという契約にする必要がある。
流石にそれを契約文面として記載する事については厚労省の役人が判断できる事ではない。
持ち帰って検討するという事だった。
そのありえない契約を締結する決断を、国会議員にさせるという事だろう。
役人は責任を取らない。
官僚とはそう言う動物だ。
高木は取り敢えず一億本の契約を纏めた。
金額は六千億を超える。
ワクチンは一回では終わらない。
本数が奪い合いになっているから在庫が確保できないと言うと、言い値で買うという。
それもその筈である、
マスコミを利用し、政府が国民の為にワクチンを確保しないと政権が持たないレベルに世論を高めていたのだから。
マスコミは金さえ出せば何でも報道してくれる。
それが日本の国益に叶うかどうかなど関係ない。もっと言えば日本人の生活や命がどうなろうとマスコミ人にとってはどうでもいい事なのだ。
マスコミ人とはそういう動物だ。
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