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鬼の子らは残忍に虫を殺して遊ぶ。テセにはそれが苦痛だった。
「どうしてあんな可哀想なことをするんだろう? あの虫が一体何をしたっていうんだ? なぜあんなにも残虐に殺されなくちゃいけないんだ!」
突き落とされた体の痛みよりもテセにとっては心の痛みのほうが耐え難かった。
誰もいないと思って放ったテセの言葉に、思いがけず返事があった。
「それは鬼の本性だから仕方がない」
テセは飛び上がらんばかりに驚いた。
川辺りの草むらにごろんと横たわっていたのは年老いた鬼のクォンだった。
クォンは村のアウトロー、いわゆる『爪はじきもの』だった。
「あっ……」
クォンに近づいてはならないと村の大人たちからは言い聞かせられていたが、テセは自分の質問に答えてくれたクォンに興味を持った。
「鬼の本性……って?」
「とかく 鬼ってものは残忍で命を踏みにじって喜ぶような性質を持ってるもんなんだ」
「……そんなことないと思う」
テセはオズオズと反論をした。
「鬼がみんなそんな性質を持っているだなんてことはないと思う」
「違うやつもいるだろうな」
クォンの言葉にテセは期待を込めた眼差しを向けた。
「だが そんなやつはもはや鬼とは言えねぇ」
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