鬼と人間

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鬼と人間

「鬼じゃ……ない?」 「あぁ。そんなことを思う鬼は、人間に近いやつだろうな」 「人間って?」  そう尋ねるテセに、クォンは驚きの表情を向けた。 「呆れた! 最近の子供はそんなことも習わねぇのか!?」  そう言ってクォンは苦々しげに 顔をしかめた。 「人間の話、聞きてぇか?」  クォンは何かを決意するような眼差しでテセを見つめた。 「……うん」  テセは深く深く頷いた。  クォンは上体を起こすと、しばらく何かを考え込むようにじっとしていた。  川のせせらぎだけが時の流れを証明している。  やがてクォンは意を決したように低いしわがれ声で喋り出した。 「この島が鬼ヶ島って呼ばれてるってことは知ってるか」  テセはコクリと頷く。 「鬼がいるから 鬼ヶ島。じゃあ島の外には何があると思う? 」  テセは答えることができなかった。  この小さな島は海岸線に沿ってぐるりと一周歩くことができる。どこから見渡しても島の外には海しか見えなかったから、島の外に何があるかなんて考えたこともなかった。
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