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「このちっぽけな島の外にはな、でっけぇ大陸があるのよ。大陸には『人間』ってのが住んでる。人間ってのは弱っちくてな。牙も角もありゃしない。腕だってひょろひょろで、大人になっても米俵 一俵すら持てやしないんだ」
「大人になっても、米俵すら持てないだって!?」
テセは目を丸くした。
鬼は人間に比べると桁外れの腕力を誇る。人間で言えば6歳くらいの小柄なテセでさえ、片手に一俵ずつ米俵を持つことくらいはできる。
「人間は俺たちが爪を一振すればドサリと倒れる。足で踏み潰せばペチャリと潰れる。子鬼らが虫を潰すのと同じ感覚だよ。いともたやすく命を奪えるちっぽけな生き物だ」
「鬼から見たら人間は虫けらみたいなものなんだね。虫を殺せない鬼は人間に近い……ってことはつまり、僕は虫けら同然ってこと?」
テセが悲しそうにそう尋ねるとクォンは首を横に振った。
「いや、そうじゃない。お前は知らないようだが、この島にいる大人の鬼どもは元々みんな人間だったんだ」
クォンの思いがけない 発言にテセ目を見張った。
「それはどういうこと?」
クォンは光る川面を見つめると、まぶしそうに目を細めながら 答えた。
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