鬼と人間

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「かつて人間の国には『法と秩序』があった。だが世の中が混乱すると、これを破る輩が増えた。法を破る奴らを捕まえる警察も捕まえた奴らをぶち込む刑務所もキャパオーバーを起こした」  警察も刑務所も初めて聞く言葉だったが、この島で悪いことをすれば即座に村長に引き渡される。テセは警察を村長に、刑務所を村長の家に置き換えながら話を聞いた。 「この問題を解決するためにある薬が開発された」 「薬?」 「元々は戦時中に人を殺戮兵器に変えるために開発された薬だった。人の弱点とも言える恐怖心をなくし暴力衝動を高め、筋力を増強する薬だ。薬の副作用として角と牙が生えてくる」 「それって……」 「そう。俺たち鬼はこの薬を投与された元人間ってこった」  テセは自分の頭にそっと手をやった。 「僕、そんな薬飲んでないよ」 「そりゃあ、お前がこの島で生まれた子供だからだ。鬼の母親の体内には薬の成分が残ってる。その母親の乳を飲んで育った子供には薬の影響が出る」 テセはがっくりと肩を落とした。 「僕は生まれながらの鬼なんだね」 「いやそうとも言い切れねぇ」  クォンはテセをじっと見つめた。
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