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鬼化薬と人化薬
「俺がみる限り、お前は鬼よりも人に近い。隔世遺伝で親の特性とは別の性質が色濃く出たんだろう」
「親の特性とは別の性質?」
「この島に送られる罪人ってのは刑期の長い奴ら、つまり重犯罪者だ。お前の両親ももれなく悪人だ。だが、お前からは悪人の匂いがしねぇ。お前は良い人間の血を色濃く受け継いでるんだな」
テセはクォンの言葉を褒め言葉として受け止めた。褒められ慣れていないテセはモジモジしながら一歩踏み込んだ質問をしてみる。
「僕はみんなが意味もなく虫を殺すのが嫌なんだ。すぐに暴力を振るうのも、気に入らなければ力で解決しようとするのにも耐えられないんだ。もし僕が人間だったら、こんなに辛い思いをしなくて済んだのかなぁ?」
「どうだろうな? 俺にはわからん」
「ねぇ、人間を鬼にする薬があるなら 鬼を人間にする薬もあるの?」
テセの縋るような視線を受けて、クォンは視線をそらしながら答えた。
「あるにはある」
「えっ!?」
予想外の答えにテセは飛び上がった。
「どこに? どこにあるの!?」
「落ち着け。あるにはあるが、手に入るとは言っていない」
テセは諦めきれないとばかりにクォンににじり寄った。
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