賢い子

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賢い子

「俺たち鬼は人間に比べて身体能力が高い。それなのに人間は罪人をこの島に送ってくるのをやめない。不思議だと思わないか?」 「えっ、不思議って?」 「言っただろう? 人間はいともたやすく命を奪えるちっぽけな生き物だって。つまり俺たちが襲えば人間なんてすぐに殺せるんだ。それなのに人間たちはせっせとこの島に罪人を送り、自分より遥かに強い鬼を増やしている」 「うーん、それは……鬼がこの島から出られないと思っているから?」 「半分正解だな。鬼の体は鉛のように重いから、長時間は泳げない。簡易ボート程度じゃ沈んじまう。だがそれなら新しい罪人を運んでくる定期船を奪えばいい話だ。鬼がその気になりゃ、本土に渡ることはさほど難しくはない」 「だとしたら、鬼が怖くない理由が人間側にあるってこと?」 「その通り。人間には武器がある。銃に撃たれりゃいくら頑丈な鬼でも倒される。最悪人間の持っているミサイルをこの島に打ち込まれたら、俺たちは一網打尽にされちまう!」 「人間のほうが鬼より強いってこと?」 「一人ひとりを比べたら鬼のほうが強い。だが人間は武器を使う」 「だったら鬼が武器を使えば人間よりも強くなるってこと?」  それを聞いたクォンは嬉しそうに微笑んだ。 「やっぱりお前は賢いな! 自分の頭で考える力を持っている」  そう言ってクォンはテセの目を覗き込んだ。 「人間は『鬼が武器を持って自分たちを襲ってくる』なんてことは心配しちゃいない。なぜならそういう契約を結んでいるからだ」 「けい……やく?」
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