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鬼の本性
「おっ、見ろよ。変な虫!」
「潰せ、潰せ!」
「羽をもいでから踏みつけてやろうぜ!」
獰猛な鬼の子らに見つかった哀れな甲虫はその鎧を剥がれ、逃れようと必死に動かす六本の脚を千切られた。
無惨に踏み潰されたその体。バキバキに折れた黒い外殻が散らばり、白い腸は路上に塗り込められている。
この様子に心を痛める鬼の子がひとりだけいた。
「テセ、お前もやってみろよ!」
楽しそうに虫を殺しながら村長の孫であるニィが誘ってくる。テセはおずおずと首を横に振って後退る。
「さっさとやれよ、テセ!」
「ニィの言うことに逆らうなんて生意気だぞ!」
ニィの取り巻きが一斉に囃し立てる。
「チェッ、本当につまらねえやつだな!」
ニィの合図で取り巻きたちはテセを取り囲むと土手から突き落とした。
あちこち擦りむきながら土手を転がり落ちたテセは、痛む体をさすりながらやっとの思いで川べりまで逃げてきた。
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