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10 最終話
10日後。
公爵夫人が私室で亡くなっていたせいで大騒ぎになった。
騎士団で私も事情聴取をされた。
でも隣に何故か執事姿のツヴァイさんが一緒にいて、私自身は大して発言すること無く、ひたすら質問に
「ハイ」
と答えるだけで終わってしまった。
何で死体が奥様の部屋にあったのか
何で騎士団の取り調べにツヴァイさんが同行していたのか
何であっさり開放されたのか
聞きたいことは沢山あったけど、死んだのはツヴァイさんでも、勿論私でもないということだけは分かったのだった。
「さ、隣国へ行く時間だよ」
隣国へ向かう辻馬車乗り場まで執事姿のツヴァイさんが、ハリーと私を見送りに来てくれた。
お土産と言って渡された書類袋の中に入っていたのは、この国の『平民のマリア』の証明書で国王陛下のサインが入った正式な移民用のものだったのだ。
目が飛び出すかと思うくらいには驚いた。
「結婚するのにいるじゃん? 取り寄せるの忘れてたでしょ」
取り寄せることなんか出来ない。
だって私の戸籍は・・・
もう考えることは止めることにした。
ケラケラと笑う彼は、ハリーに隣国の言葉で挨拶をして手を振った。
「adieu! お元気で~! 幸せにね」
彼のプラチナブロンドに日の光が当たってキラキラとして・・・ あ。
「デビュタント・・・」
デビュタントの時ご挨拶した国王陛下がプラチナブロンドと綺麗なグリーンの瞳だった事を思い出した。
そして、その弟である王弟殿下も・・・
私が急に動かなくなったので不思議そうな顔をするハリーに、笑顔を返してから手を繋ぐ。
彼は優しい顔で頷いた。
空いた方の手の指で陛下のサインを何となくなぞり、
「ありがとうございます」
そう呟いた――
~Fin~
伯爵令嬢マリア
~名前はツヴァイ 自称詐欺師 ~
by.hazuki.mikado
2023.8.20.sun
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