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4 綺麗な人
狭い階段を登ると、古いアパルトマンのドアに辿り着いた。
彼女がドアをノックすると、気だるげな返事が聞こえた。
小綺麗でシンプルな部屋の中で、安楽椅子に腰掛けて欠伸をしている綺麗な男性と目が会った。
プラチナブロンドに緑の瞳は昔何処かで見たような気がするが、どうしても思い出せない。
1人で首を捻っていると、彼女が私を彼に紹介してくれた。
『ツヴァイ、彼女は友人のマリア』
いつの間にか友人に格上げされていたのには驚いたが、彼女が私の身の上を語り力になって欲しいとお願いしてくれた。
「いいよ」
えらく簡単に了承して貰えたのに驚いた。
「逃げた後どうする?」
「隣国に渡って平民として生きていきます。今迄も貴族令嬢というより平民に近い生き方でしたから不安は有りません」
「ふうん。頼もしいね」
彼が片手を差し出して来たので握手した。
「じゃあ契約成立だ。明日から忙しいよ」
どうやったのかは分からないが、翌日からメイド見習いとして公爵家に通えるようになった。
初日に屋敷から出た所で黒塗りの馬車が待機していて、それに乗り込むと見たことのない様な金髪の美女が座っていた。
「おはよ」
「え、ツヴァイさん!?」
声は彼だったが、どう見たって貴族のご令嬢だったため声がひっくり返ってしまった。
「人前ではお嬢様って言うの!」
怒った仕草も女性そのものだった・・・
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