届けに行きます

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 ラブレターを届けに行くのは、昼休みと放課後の陸上部の部活がない時間に限る。 「お疲れ七瀬!!」  無事に届けたあたしに、スポーツドリンクが入った水筒を手渡してくる川瀬明子(かわせあきこ)。  あたしと同じ陸上部に所属しているマネージャーであり友達。  ありがとうと言いながら、のどをならしごくごくとスポーツドリンクを飲んでいく。あたしの飲みっぷりに目を細めながら、明子が聞いてくる。 「階段の上り下りで鍛えますんでって先生たち説得させてたときは、ビックリしたよ。そんで、七瀬のラブはどうよ?」  濡れた唇をハンカチで拭いながら、首を傾げていく。  恋したことはないは言い訳  本当はあたしも片想いしている。  目の前の友達に・・・  だけど言えずにラブレターを届けに行く日々を送って密かに芽生えた気持ちを誤魔化して。  各教室にいる男子生徒にときめこうとしている。そんな理由言えるわけないから。 「あたしのラブはまだだよーそれよりも筋肉ついたでしょ?」  筋肉愛なんて話して、明子の手が肩に軽く触れるのをドキドキしながら待っている。そんなドキドキの瞬間をクラスメートの呼び出しで遮られる。 「谷川に用だって」  息つく暇もなく、ラブレターを後ろ手に持った男女が1組の教室にやってくる。  立ち上がったあたしに明子が、わたしも手伝うよと言い出す。それを片手で制して断りを入れて。 「明子は教室に待ってて、今みたいにお疲れ様って言って水筒手渡して」  それが1番嬉しい行動だから。明子と一緒に行きたいけれど、そしたら気づかれるかもしれない。  シュッとした顔立ちで、長い髪をお団子ヘアーに纏めている。切れ長の二重で奥目。  笑うとえくぼが見えること    ワイシャツはボタンを外すことなく、ちゃんと襟元のボタンまでつけているとこ  高校のスカートは気崩さずに丈を守っていること。他にも好きなことを上げたら止まらないくらい片想いしている。 *  あたしが教室の前方に向かいかけた時、明子の声があたしを呼び止める。 「七瀬、わたしも頼みたいんだけど」  見返りながら、淡いパステルカラーの水色の封筒に視線を落とす。  笑え、うまく微笑まなきゃ  いつもみたいに 「いいよー何年何組に届けに行こう?」 「3年3組の北原修吾(きたはらしゅうご)先輩にお願いね」  汚れぬよう綿手袋をはめて、明子の指が少し触れた。  あたしの恋は忘れよう  こうしてあたしは引き続き片想いの人の想いを届けに階段を上がったり下りたりして、お相手の教室へと向かって行く。 「北原修吾先輩はいますか?」 終
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