熱中症

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 彼女の肌は脂肪だけで出来ているように柔らかく簡単に指がうずまった。  滝のような汗。  風呂上がりに体を拭かないままだったのか。  濡れた肌からは少し消毒液の臭いを感じた。  胸の谷間に吸い込まれる水滴。  その上にあるマットな質感の厚いルージュの唇が艶めかしく動く。  くっきりとした記号のような形が細かく歪み、それが言葉を紡いでいるとわかるが、何を言っているかは理解できない。  ただ、喉が異常に乾く。
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