そうだ、〇〇へ行こう

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それらは、少しづつこちらに近づいてきた。何か話でも聞かれるのだろうか。面倒事にはもうこれ以上関わりたくないと思い、移動しようとした時、雪乃は違和感に気づいてしまった。周りの景色は歪んでいるし、中心部も霞んでいるから、遠く視界の端にいるスーツ姿の男などのだ。 だがあの2人は、どの視界に入っても歪むこともなく、はっきりと見えている。 車いすを漕いでいたら追いつかれる。雪乃は立ち上がり走って逃げた。歪んだ視界が揺れに揺れ、気持ち悪くなるのも構わずとにかくその2人から逃げ出した。あぁ、やっぱりドクターの言うことを聞いておけばよかった…なんて思ったときには、酷い船酔いのような感覚と、身体がフッと浮いたような感触、そして指すような強風のあと、地面。 ボソボソと話すような声が、今度は聞き取れた。 『さぁ、彼岸へ行こう』
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