2. 最悪のブーケトス

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イケメンで、仕事ができて人当たりもよい久喜は、社内の男女問わず人気がある。 身に着けるスーツは基本グレーや黒といった地味な装いが常の、真面目で融通の利かない私とは真逆だと同期たちの間ではよく話題になっていた。 けれどなぜか馬が合い、三年前、同期の結婚式の幹事を引き受けたのを機に付き合うようになった。 交際は順調だったが、昨年久喜が歴代最年少で課長に昇格し、私もチーフに抜擢され、忙しくなり、一緒に過ごす機会が減ってしまった。 『ちょっと逢花、お互いの親にも紹介したなら、ちゃんと結婚話を詰めなきゃ』 来春、幼馴染と結婚予定の親友に幾度となく忠告されていたが、深刻に捉えていなかった。 結婚しようか、と以前言われ了承していたから、会話が減り、些細な諍いが増えて、キスの回数が減っても気にしないようにしていた。 久喜を紹介した両親からは、ひっきりなしに結婚予定を聞かれていたけれど。 私の実家は都内から電車で一時間半ほどの場所にある。 地元の友人たちは既婚者が多いせいか、母にこれまで何度も見合い話を持ち掛けられていた。 『久喜、今度の連休どこかに行かない?』 『悪い、仕事』 誘っては断られ、恋人らしからぬ生活が続き、結婚話も一向に進展しなかった。 そして三カ月前、唐突に別れを切り出された。 仕事が忙しくすれ違いばかりなのが理由と言われたので、今後は時間を合わせ、一緒に過ごせるように努力したいと伝えた。 けれど、恋愛感情も元々なかったのだから潮時だろと告げられ、言葉を失った。
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