2. 最悪のブーケトス

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送別会が中盤に差し掛かり、周囲はそれぞれ好き勝手に会話して、飲んだりしていた。 笠戸さんと久喜への挨拶も同僚たちと済ませ、幹事の女性に帰る旨を伝え、料金を支払おうとするとなぜか慌てて引き留められた。 この時点でおかしいと思うべきだった。 「先輩、お渡ししたいものがあるので少し待っていただけますか?」 とってつけたような笑みを浮かべた笠戸さんの発言を耳にした途端、幹事の女性が参加者に注目するよう呼びかける。 「皆さん、聞いてください! 一路先輩に笠戸さんから贈り物があるそうです!」 周囲のざわめきが消え、視線が集中する。 やめて、目立ちたくないの。 贈り物なんかほしくない。 笠戸さんが目の前にやってきて、すぐ後ろには久喜が立っていた。 「先輩、本当にありがとうございました。結婚式のブーケと同じ花を使って特別に花束を作ってもらったんです」 「素敵! 花嫁直々のブーケトスってこと?」 「いいな、私も欲しいわ。綺麗ねえ」 「……あり、がとう」 同僚たちの声にお礼を言うだけで精一杯だった。 なんで、今、ここで私にブーケトスもどきをするの? そう思ってしまったのは、私の性格が歪んでいるから? 「笠戸さんからもうひとつ報告があるそうです!」 幹事の女性が声を張り上げると、なぜか後方の久喜の表情が強張る。 「私、妊娠しているんです」 真っすぐに見つめられ、息を呑んだ。
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