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「本気、なの? 後悔しない……?」
「それは俺の台詞だ。このまま逢花を手離せばきっと後悔する」
眦を下げ、私のこめかみに唇で触れる。
よくある誘い文句に乗るなんてどうかしているともうひとりの私が頭の中で忠告するが、視線を逸らせない。
ゆっくりと整いすぎた容貌を傾けた葵さんが、私の唇を自身の唇で塞ぐ。
至近距離に見える伏せた長いまつ毛と額に微かに触れた艶やかな髪に、心が大きく揺れる。
「目は閉じろよ?」
ほんの少し唇を離し、情欲を滲ませた目で甘い命令を発する。
ドクンドクンと大きく響く鼓動をコントロールできない。
「待っ……」
私の制止を無視するかのように唇が再び重なり、長い指が後頭部を強く引き寄せる。
角度を変えて繰り返される長いキスに翻弄され、頭の中が真っ白になっていく。
唇を擦り合わされ、時折、下唇を甘噛みされる。
こんなに胸がいっぱいになるキスは初めてだ。
「……可愛いな」
唇を触れ合わせたままつぶやかれ、頬が熱を帯びる。
すぐに再開された口づけに足の力が抜けていく。
お見通しだったのか、サッと私を横抱きにした葵さんがエレベーターを降りる。
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