(一)

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 すると奥から福山富満が出てきた。 「何かあったのかい」  刑事はおっさんの姿を見ると、お辞儀をした。 「重要参考人として、三川美幸さんに署までご同行頂けませんかね。いや、逮捕とかではなく、お話を伺いたいだけなんですよ」  彼女は小さく「私、行きたくない」とおっさんにしなだれかかった。明らかにわざとだろう。あざとすぎると俺も思うが、それが彼女の処世術でもある。 「何かしたのかい?」  おっさんが優しく尋ねる。 「ううん、何も」  そう小さく話を交わすと、おっさんは「だったら何も心配することないよ。行っておいで。終わったら電話して。車で迎えに行くからさ」と彼女をなだめた。 (続く)
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