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彼女は不安そうな顔をめいっぱい作り、おっさんの顔に向けていた。
おっさんは仏のような優しい顔をして彼女を見ていた。
「わかりました。お話だけなら」
彼女はそう言うと、「支度してきますのでお待ち下さい」と奥に入っていった。
そうして一〇分ほどで支度を終えて出てきた。ここに来る前にはあまり着たことがない地味なシャツに紺色のカーディガンとベージュのズボン姿になった彼女は、玄関ドアの向こうで待っていた刑事たちとともに、マンションの一階に駐めてある覆面パトカーに乗り込んだ。
俺は、彼女が家を出る時に彼女のハンドバッグに乱暴に押し込まれた。つまり、俺は彼女と一緒に泉水警察署へ行くことになった。
(続く)
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