凪と小梅

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凪と小梅

 8月28日月曜、よく晴れた15時、仁は本田家を監視するため、隊長の雨風と共に、カメラ部隊の管理する液晶を睨んでいた。場所は本田家近くに駐車したトラックの中。  液晶に映る20代の本田小梅は、痩せぎすで部屋着はボロボロ。完全に女を捨てている。一時間に一回、彼女の服従を確認しないといられない祖母、ハツ対策に、母、理代子不在時に共同部屋の引き戸につっかいぼうをかけた。棒の長さが足りず、戸が二センチ開いてしまう。しかし小梅は妥協したようだ。  一時間後、ハツが小梅のかわいい顔を求めてやってくる。 「小梅ちゃん」  ハツはノックの意味が分からない。どんなに相手に注意されても戸をたたいた直後に開けていいと判断する。  ハツはいつも通り引き戸に爪を立てたが、小梅の工作通り、二センチしか開かなかった。でも小梅が中にいるのは見えている。 「小梅ちゃん!! いるんでしょ!! いるんでしょ! 開けて!! いるんでしょ!!」  ハツはパニックを起こす。小梅の存在が確認できるだけでは駄目なのだ。対面と受容と承認と小梅のかわいい表情、つまり服従が、どうしても必要。  「いるんでしょ!! 開けて小梅ちゃん!!」  小梅は応じなかった。ハツは一階に走る。ハツの駒は小梅の兄、博隆だけではない。彼が不在なら今度は夫に騒ぐ。  「あなた!!小梅ちゃんがおかしくなっちゃったの!!」  「ああ?!」  「だからあ、おかしくなっちゃったって言ってるのお!!」  「何だってえ?!」  「こ・う・め・ちゃんがおかしくなったの!!」  「あーっ?!」
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