10話

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10話

  私が家出をしてから、2カ月半も過ぎようとしていた。 実家に帰る事になってから3日が経っている。既に実家のキエラ侯爵邸に着き、今はサロンにて両親と3人で話し合いをしていた。 「……リゼッタ。お前がアルタイル様と離縁すると聞いた。ギルバートはそれを耳にして王都へ行ったが」 父のタウロスがそう切り出す。母のイリスもそうだったわと頷く。 「ええ。私はそのつもりです」 「まあ。アルタイル様はイサギの奥方のリューネ殿にだいぶご執心らしいからな。それが嫌になっても仕方ないと思う」 「……父さんは知っていたのね。ええ、アルタイル様はリューネさんに「自分の嫁にならないか」とか本気で言っていたわ。それで私も完璧に頭にきてしまったのだけど」 「本当か。わたしもそれを聞いた時はアルタイル様の神経を疑ったが」 「……タウロスがそう言うのもわかるわ。なんと言うか、リゼッタやリューネさんが可哀想ね」 はっきりと母が言う。呆れ気味にだが。 「本当だわ」 私が頷くと母はふうとため息をついた。 「……本当にアルタイル様は女性を何だと思っているのかしら。いくら何でも義姉のリューネさんに横恋慕するなんて。リゼッタを放ったらかして」 「母さん」 「いえね。愚痴の一つも出てくるわ。アルタイル様は家柄も血筋も高貴な方。性格も真面目だと聞いたからリゼッタをお嫁に行かせたのにね」 まあ、母の言う通りだ。私は反論せずにそうかとだけ言う。 ちなみに娘のソフィアは乳母のイリスと別室にてお昼寝中だ。なのでその間に話し合うことになった。 「……イリス。とりあえずはリゼッタとソフィアが無事に帰ってきた事だし。今日はゆっくり休ませてやろう」 「そうね。リゼッタも妊娠中だし。あなたの部屋はそのままにしてあるから。休んできなさいな」 「わかった。ありがとう、父さん。母さん」 お礼を言って立ち上がる。そうしてサロンを出てかつて使っていた自室に向かったのだった。 2時間ほど寝て軽食を食べた。ソフィアは隣の部屋で軽食を同じように食べた後、湯浴みをして夜の9時頃には寝てしまった。私も湯浴みをしてからゆったりとしたネグリジェに着替えて9時半には寝た。 イリスとサラサも私とソフィアが寝ると侍女用の控え室に戻っていく。2人もかなり疲れているだろう。そう思いながら瞼を閉じたのだった。 「……おはようございます。奥様。朝ですよ」 サラサの声で目が覚めた。私が伸びをしながら起き上がると他にも3人の侍女がいた。確か、サラサの先輩侍女であるサリスとシェル、アルカナだ。 「おはよう。顔を見るのは久しぶりね」 3人に声をかけるとサリスが嬉しそうに言う。 「……ええ。お久しぶりです。お嬢様」 「サリスもシェルもアルカナも。なんか、前よりも慣れた感じね」 「そりゃあ、お嬢様が嫁がれて3年以上は経っているんですよ。侍女のお仕事も慣れますよ」 サリスはそう言うとタオルと歯ブラシなどを手渡してくる。シェルとアルカナ、サラサで部屋のカーテンを開けたりベットのシーツを取り外したりしていた。かつてキエラ侯爵邸にいた時、サリスとシェル、アルカナの3人は私付きの侍女だった。が、ウィルソン公爵家に嫁ぐのが決まった時、あちらから連れてくる侍女は一人だけにするように要望があった。なので泣く泣くこの3人を置いてサラサだけを連れて行ったのだ。今となっては何で言う通りにしたのやらとバカらしいが。 その後、洗顔と歯磨きを済ませてドレスではなく足首までの丈のワンピースを着た。髪も簡単に結い上げて楽な格好になる。 朝食も簡単に摂りソフィアの様子を見に隣の部屋に行く。既にソフィアは起きていて元気に挨拶をする。 「おはよう。お母様!」 「おはよう。よく眠れたみたいね」 「うん。久しぶりにお祖父様とお祖母様に会えたから」 そう言うソフィアは嬉しそうだ。確かに父方の祖父母には会えても母方の祖父母には滅多に会えなかった。その分、嬉しさは格別だろう。 そう思いながらソフィアの遊び相手をしたのだった。
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