2話

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2話

  私がイサギ兄さん宅であるセアラ子爵邸で暮らすようになってから10日が過ぎた。 その間、ソフィアの世話をしたり刺繍をしたり読書をしたりとのんびりと過ごしていた。私は現在、21歳でソフィアが3歳になっている。 私はこの日も刺繍を少しずつやっていた。子爵家で用意された部屋は調度品や家具が白木造りで作られていて壁紙や絨毯の色もクリーム色で統一されており落ち着いた雰囲気になっている。私とソフィアが使うので大人の女性用の衣服の他に子供用のワンピースなどもあった。 玩具もぬいぐるみや人形、積み木などもありソフィアは飽きることなく遊んでいる。絵本も何冊か本棚にあったので乳母のイリスが寝る前などに読み聞かせをしていた。 本当にイサギ兄さんとリューネさんには感謝してもしきれない。また、先代の子爵夫妻からもソフィアにと子供用のワンピースやドレス、靴を贈られた。 まあ、感謝状は出したが。私としてはかなり気を使ったと思う。 「リゼッタ様。もう刺繍はここまでにしますか?」 「……そうするわ。サラサ、ソフィアはどうなの?」 「お嬢様はお昼寝をしています。先ほどまで字の書き取りや計算などを頑張っていまして。お疲れになったようですね」 「そうなの。じゃあ、休憩するから。お茶と軽食を頼むわ」 「わかりました」 サラサは一礼すると部屋を出ていく。紅茶と軽食を取りに行くためだ。 侍女がいなくなると私は腕をぐるぐると回して肩の凝りをほぐした。こうでもしないと硬くなってしまった筋肉がほぐれない。 私は窓の景色を眺めた。もう、季節は秋の終わりー11月になろうとしていた。 ウィルソン公爵家を出てから10日。まだ、それくらいしか経っていない。 その間、刺繍は進んでいてハンカチに花の模様をあしらったりドレスの裾に海産物の模様を入れたりしていた。なかなか面白いのでこれは続けてもいいと思う。 「……リゼッタ様。軽食と紅茶をもらってきました」 ドアが開いてサラサが入ってきた。ワゴンを押しながらだが。美味しそうな香りが部屋に漂う。 「今日はベーコンとチーズのスコーンとサンドイッチです。お茶を淹れますね」 「ご苦労だったわね。じゃあ、早速スコーンをいただくわ」 私はスコーンを手に取ると手で割り口に運んだ。こんがりと焼いたスコーンの中のベーコンとチーズの塩味がちょうど良い。これは軽食向きの味だ。 サラサが紅茶を淹れたカップを私の前に置く。スコーンを半分ほど皿に置くと用意してあったナフキンで手を拭いた。そうした上でカップを取り紅茶を口に含んだ。 紅茶はアールグレイであっさりとした味だった。その後、サンドイッチもレタスとトマト、ハムにチーズ入りでなかなかのお味だ。軽食を一通り食べると私はまた食後に紅茶を飲む。 サラサが後片付けをして部屋を再び出ていく。子爵家の料理人はいい仕事をしていると感じた。はっきり言って公爵家よりも料理が美味しい。 が、最近私は胃のむかつきや吐き気、体のだるさで食事を十分に摂れずにいる。どうしてだろうと思う。 なので今日も朝食は控えめにしていた。昼食は摂らずに休んでいた。 そうこうするうちにサラサが戻ってきた。私は意を決して声をかけた。 「……ねえ。サラサ」 「どうかしましたか。リゼッタ様」 「ちょっと最近、体の調子が良くないのよ。あんまりにも続くものだからどうしようかと思って。医師を呼んだ方がいいかしら」 「……そうですね。リゼッタ様、こちらに移ってから昼間はお休みになる事が増えましたから。医師を呼んでみてもいいかもしれません」 「リューネさんにだけでも伝えておいてほしいの。厄介になっているのはこちらだし」 わかりましたとサラサは頷いた。その後、リューネさんに伝えたら医師を呼んで一度診てもらってみてはと伝言があった。私はかかりつけの医師を呼ぶようにサラサに言ったのだった。
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