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5話
リューネさんの所から自室に帰ってきた。
イリスやサラサが無言で出迎える。どうしたのだろうと思っていたらサラサが近づいてこう言った。
「……奥様。アルタイル様がようやっと探しておられるようです」
「え。それは本当?!」
「はい。ですがイサギ様は知らぬふりをするとおっしゃっていました。奥様もそのおつもりで」
私もそれには頷いた。ソフィアはきょとんとした顔をしている。が、何かを察したのか黙っていた。
その後、夕方になっていたのでソフィアに夕食を食べさせた。イリスが給仕とソフィアの食事を助けるために応接間に連れて行く。私はサラサに軽食でつまめるような物を頼んで寝室に行った。
ベッドに入り横になる。今は楽な部屋着用のワンピースなので気にせずにできた。ふうと息をつく。妊娠中は適度な休憩も取らないと意外と疲れやすいようだ。一度経験しているからわかるが。
うとうとしていたら、サラサが起こしにやってきた。
「リゼッタ様。先ほどは失礼しました。あの。軽食を持ってきましたよ」
「あら。もうなの。わかった。応接間に行くわ」
私が応接間に行くとソフィアとイリスはいなかった。
なのでゆっくりとサンドイッチをつまみながら紅茶を飲む。サラサにソフィアの居場所を聞いたらリューネさんの部屋との事だった。どうもあちらでリューネさんが代わりに遊び相手をしてくれているらしい。
正直、申し訳なかった。本当に早めに体調が良くなってくれたらいいのに。
そう思っても仕方ないのはわかっているのだが。私はサンドイッチを一通り食べるとサラサにソフィアを迎えに行かせた。
自分は体調が良くないので行けないとサラサに伝言も頼んだ。というわけでソフィアは帰ってきた。
「……奥様。お嬢様が戻りましたよ」
「そう。ソフィアを寝かさないとね」
「わかりました。隣の寝室へ行きますね」
イリスはそう言って隣の寝室に行く。実は私の妊娠がわかってからソフィアは隣の客間にある寝室で寝ている。そうしないと私がゆっくり休めないだろうとリューネさんやイサギ兄さんが配慮してくれたのだ。
「奥様。イサギ様とリューネ様がよく休んでほしいとおっしゃっていましたよ。お二人とも奥様の事を心配していました」
「そうなの。じゃあ、明日リューネさんにお礼を言いに行くわ。まあ、体調が悪かったらサラサに伝言をまた頼むわね」
「ええ。そうなさいませ。わたしもリューネ様に奥様のお言葉をしっかりとお伝えします」
頼もしいわねと言うとサラサはお任せくださいと笑う。そうして、湯浴みをサラサに手伝われながらした。ゆったりとしたネグリジェに着替えるとベッドに入る。深い眠りにすぐになったのだった。
そうして、翌日にリューネさんにお礼をサラサに言って伝えさせた。体調が本当に良くなかったので伝言という形になってしまったが。リューネさんは気を悪くせずにむしろリゼッタさんは大事な時期だから休める時は休んでほしいと言ってくれたらしい。
それには深く感謝した。リューネさんも小さな子供さんがいるからよくわかるようだ。お互いに通ずるものがあるというか。
「奥様。イサギ様が妊娠中に良いプルーンを下さいましたよ。召し上がりますか?」
「……ええっ。兄さんがプルーンをくれたの?」
「はい。栄養が豊富だし果物だから食べやすいだろうと」
「わかったわ。食べてみる」
「では。あの。ペースト状にしたものなので。お水に溶かしてきますね」
頼むわと言うとサラサは厨房に行った。私はベッドから降りる。近くのカウチに座るとふうと息をつく。まだ、悪阻がひどくて朝食も残してしまった。なんか、ソフィアを妊娠していた時よりひどい気がする。
そう考えていたらサラサが戻ってきた。手には紫色の液体が入ったコップと瓶詰めのプルーンを持っている。
「……奥様。プルーンのジュースを持ってきましたよ」
「ありがとう。飲んでみるわ」
頷くとサラサがカウチにまで持ってくる。受け取りプルーンのジュースを早速口に含んだ。少しばかりの酸味と甘みが口内に広がる。思ったより美味しい。
あっさりとしていて飲みやすかった。全部を飲むとサラサは安堵したようで笑顔になっていた。私もこれであれば、毎日飲めそうだと思ったのだった。
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