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8話
私が家出をしてから2か月半が過ぎた。
実家に帰ると決めてから2か月近くが経っている。季節は2月ー真冬になっていた。とりあえず、セアラ子爵領は雪が降っておらず、温暖な気候といえる。
私は実家の両親に妊娠も安定期に差し掛かったので帰っていいかと手紙を書いた。そしたら、今であればいいと返事があった。なので早速、返事が来て2日後には旅装に着替えて支度をする。サラサとイリスも同様にしてその日の朝方に出発した。
またの馬車での移動にソフィアは眠そうにしている。2か月半もの間、お世話になった伯父宅でソフィアはのびのびと過ごしていた。ちょっと可哀想ではあるが。でもいつまでも世話になるわけにもいかない。私は向かいの席でこくりこくりと舟を漕ぐ娘に苦笑したのだった。
「……奥様。ご実家のギルバート様についてですが。何でもギルバート様は奥方様とご一緒に王都へ行かれるようです。お子様もご一緒だそうですよ」
「え。ギル兄さんが王都に行くって。じゃあ、実家には両親だけなの?」
「はい。ギルバート様はリゼッタ様の事を心配なさっていましたけど。奥方様やお子様の手前、ご自分でお迎えに上がる訳にもいかず。なので代わりに父君と母君がお迎えに上がると話し合ったそうです」
サラサが説明する。ギル兄さんがいないとなるとちょっと困った。
「……リゼッタ様。その。ギルバート様はリゼッタ様の代わりにアルタイル様と話を着けに行くそうです。それで奥方様も同行なさったと聞きました」
「……なるほど。兄さんなりに考えてくれたようね。後でお礼の手紙を書くわ」
「そうなさってください」
サラサの言葉に頷くと私はお腹を撫でた。ふうと息をつく。もう、妊娠4カ月も過ぎようとしている。ちょっと実家に帰るのを早く決めすぎた感はあるが。それでもソフィアやこの子の事を考えると実家にいた方が安全なような気がしてしようがない。夫の元にいても我慢できたかもわからないし。
だったら、離縁した方が良さそうだ。兄さんがアルタイル氏に話を着けに行ってくれたのだったら後は子供が生まれてくるのを待って。それから離縁ー婚姻を解消する手続きを取ったらいいだろう。
漠然と考えながら私は実家でどう過ごそうかと考えたのだった。
実家のキエラ侯爵領はセアラ子爵領からさらに馬車で3日程行った所にある。
サラサやイリス、ソフィア、私の4人に御者、護衛役の騎士が騎馬で付き添う。
合計して8人の人数でキエラ侯爵邸に向かっている。ソフィアはあまりキエラ侯爵邸に行った事がない。なので私の両親ー母方の祖父母には馴染みがなかった。なのでキエラ侯爵邸のお祖父様やお祖母様に会うと言っても実感が湧かないようだった。
「……お母様。キエラのお祖父様とお祖母様はどんな方なの?」
「そうねえ。お祖父様は穏やかな方よ。お祖母様も優しいし。ソフィアが来るって言ったら喜んでいたわ」
「へえ。じゃあ、お祖父様とお祖母様にきちんと挨拶しないと」
そう言うソフィアに私は頭を撫でてやる。擽ったそうにソフィアは笑う。
「……ソフィア。お祖母様の言う事をよく聞いてね」
「うん。お母様が言うんだったらそうする」
ソフィアが頷くと私は頭から手を離した。今はまだ宿屋で休憩を取っていた。
私とソフィアが2人部屋でサラサとイリスも同様に、騎士の3人は2人部屋を2つ取り御者と相部屋にしたと聞いた。
「お母様。お腹減ったね」
「そうね。そろそろサラサとイリスが呼びに来ると思うわ」
そう言うとソフィアはまだかなと退屈そうだ。私達が泊まる宿屋は中の上といった感じのところだった。私とソフィアが泊まる部屋はこの宿屋の中でも上級だと主人が言っていたが。
「……奥様、お嬢様。お食事の時間ですよ」
サラサがノックをして知らせにやってきた。ソフィアがやったと嬉しそうにしながら部屋を先に出て行く。その後を私はゆっくりと追いかける。サラサとイリスが大丈夫ですかと言いながら一緒に歩き出す。
そのまま、食堂まで行ったのだった。
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