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9話
食堂で夕食を済ませて部屋に戻る。
ソフィアは既に眠そうだ。軽くでいいので湯浴みをさせたいとイリスに言った。そしたら、サラサと二人でソフィアを抱えて部屋に付いている浴室に行った。
小一時間もしない内にサラサとイリスは眠ってしまったソフィアを抱き抱えて戻ってくる。私も浴室に行き、ざざっと髪と体を洗い、お湯に浸かるのもそこそこに上がった。
「……奥様。お嬢様はもうお休みになりましたよ」
小声でサラサが言った。私は頷くと髪の水気を拭き取りながらベットの端に座る。サラサは近づいて鏡台の前に座るように促した。私は言われた通りにする。
サラサは私の髪に香油を塗り込んでブラシで梳かした。一通りしてできましたと言う。立ち上がってベットに向かった。
「お休みなさいませ」
「……お休み」
私が言うとドアが閉められた。ベットのシーツと毛布に包まって瞼を閉じる。そのまま、眠ったのだった。
翌朝、ソフィアは元気に目を覚ました。私も同じくらいの時間に目が覚めた。
サラサとイリスがやってきてソフィアと私の身支度を手伝う。ソフィアは顔を洗い、歯磨きをイリスに手伝われている。私もサラサに助けられながら顔を洗ったりした。悪阻はないがまだ眠気がある。我慢して手早く身支度を済ませてしまう。
簡素なワンピースを着て編み上げのブーツを履いた。髪はハーフアップにして簡単にまとめた。上に外套を羽織り、手袋も履く。寒さ対策だ。
ソフィアもしっかりと着込んで耳当てや手袋、外套を羽織っている。サラサとイリスも同じくだ。今は初春とはいえ、まだまだ冷える。これくらいは着込んでいないとキエラ侯爵領で震え上がってしまうだろう。
「……奥様。今日も冷えますね」
「そうね。ソフィアが風邪をひかないか心配だわ」
「奥様も気をつけてくださいね。お一人だけの体ではありませんから」
そうするわと頷いた。サラサは念のためにと先ほど、私のお腹に腹帯を巻いている。まだ早いと言ったがお腹を保護するためだと聞いてくれなかった。
まあ、イリスの意見でもあったらしいが。仕方ないと諦めた。
「腹帯はもうちょっと先じゃなかったかしら」
「……奥様のお腹の大きさだと双子の可能性があるとルーブル先生が言っていました。だから、腹帯をさせていただきました」
サラサが大真面目に言う。心配し過ぎだと思うが。
「……まあいいわ。それより、実家まで後2日くらいはかかるわね」
「そうですね。キエラ侯爵邸まではそれくらいはまだかかりますね」
「両親だけだとちょっと心配だわ。早く着いてくれないかしら」
ふうとため息をつく。馬車での旅なのでゆっくりとしか行けない。それが歯がゆくもあった。
サラサは窓の景色を眺める。私も同じようにした。イリスはソフィアが眠そうにしているので膝枕をして寝かせようとしていた。ガラガラと車輪の音が響く。
馬に乗ったら早いのだが。妊娠中なのでそれもできない。私は退屈なのを持て余していたのだった。
「……奥様。もうソフィア様は眠ってしまわれました」
「あら。そうなの。じゃあ、静かにしておいた方がいいわね」
「お願いします」
イリスが言うので私はサラサと目を合わせた。サラサも苦笑する。互いに仕方ないかと笑い合った。
「奥様。とりあえず、もうお昼ですから。食事にしましょう」
「……ええ」
私は馬車の中で摂るのも何なので外に出ようかと考える。ソフィアが寝ているので静かに扉を開けた。娘は起きない。ほっとしながら外へ出た。
その後、軽食を食べてすぐに馬車に戻る。イリスの膝枕でまだソフィアは寝ていた。私はささっと向かいの座席に座る。ふうとため息をついた。
サラサも戻ってきて乗り込む。馬車の外で休憩していた騎士や御者も準備をして馬車を再び走らせる。実家へとまた近づいたのだった。
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