第一章

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 これはアトラクションの一種かもしれない。  わたしは起き上がった。 「起きたぞ爺」 「さようでござりますなぁ」  おじいさんの身長は、わたしより低い。  その割にひげが長く、床にくっついていた。 「ここどこですか?  こんなアトラクション、パンフレットにありましたっけ」  そう確か、遊園地の門をくぐったとたん、わたしは激しいめまいに襲われたのだ。  そこからの記憶がない。  お尻の下の、ひやりとした台座をなぞる。  ピカピカした床は立派な一枚岩だ。  最近のテーマパークは造りが凝ってるなぁ。 *  次に現れたのは、緑色の髪をした男だった。  メガネをかけた、生真面目そうな人物だ。  歳は20代半ばくらいかな。  わたしは暖炉のある部屋の、一人掛けソファに座らされていた。  メガネは恭しく跪き、「失礼いたします」と断ってわたしの右手をとる。  お嬢様設定なのかな。  ちょこっと気分がいい。  しかしメガネは突如、顔色を変えた。 「大変です王子殿下。  この娘、『雪』を持っていません!」  ゆき?  あの空から降ってくる、雪のこと?
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