結人と雅美くん

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「着いたら君に、お願いがあるんだ。。結人の傍にいてあげて欲しい」 今度はそう告げた。 雅美はビックリしたような顔で五十嵐を見て小さく頷いた。 車は順調に京都へ向かって走り続けた。 京都に着いたのは深夜0時を回っていた。京都市内の高級ホテルに雅美は通された。 「明日朝8時に迎えに来るから。」 そう言い残すと、五十嵐は部屋を後にした。 雅美はスマホを取り出しLimeを送ろうか悩み、何と打ったらいいか思い浮かばず、手を止めた。 そして明日何を話せば良いのか悶々としながら、夜を過ごしたのだった。 翌朝きっちり8時に五十嵐は雅美を迎えにきた。 雅美は着物姿でいた。 これが昨日の彼だろうか? 目を疑うような美しさに五十嵐は一瞬見惚れた。 「おはようございます。」 五十嵐は雅美に声をかけた。 「おはようございます。」 「九条さん。」 「鈴音と読んで下さい。」 雅美はそう告げた。 「鈴音さん。こちらへ」 五十嵐は車の助手席へとエスコートする。 「お邪魔します。」 雅美がシートベルトを締めると、車は走り出した。 車内は無言だった。ただ時折五十嵐は雅美をチラチラと見ていた。 ただ座っているだけで気品が漂う。 これは昨日の彼だろうかと疑いたくなるほど雅美は美しく、気高かった。 「着きました。ドアを開けるので少しお待ちください。」 五十嵐は助手席側にまわり、車のドアを開ける。 「こちらへ」 「はい。」 雅美は五十嵐の後をついて歩く。 周囲の視線が雅美に降り注ぐが、雅美は堂々とした足取りで歩く。 華麗で優美な鈴音として。 「あのこ誰」 「凄く綺麗ね」 周囲がざわつく。 「鈴音と言います本日は宜しくお願いします。」 「お願いします。」 つられたように周りがそう告げた。 「五十嵐さんが連れて来たってことは新人のモデルかしら」 「きっとそうね。昨日は大変だったもんね。でも大丈夫かしらそうとう荒れてたもの結人」 「あの子鈴音さんって言ったかしら綺麗なこね」 様々な声が飛び交う中でも雅美は堂々としていた。
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