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「嫌だって言ってるだろ。だいたい無理矢理してきたのはあっちじゃないか、撮影はしない。」
結人の怒り声が聞こえる。
「断るにしても、もう一度監督に直接伝えて頂戴って言ってるじゃないの。本当に聞き分けのない人ね」
「勝手に契約外の撮影押し付けたのはそっちだろ」
結人はご立腹だ。
「またやってるわ。」
周りのスタッフがうんざりといった顔つきで声の主の方を見る。
雅美はすくっと立ち上がると、声のする方へと足を早めた。
遠くから2人の言い争う姿が見えた。
視線の先に結人はいた。
結人の視界に雅美が入った瞬間、結人は駆け出していた。
そして駆け寄るなり雅美をかき抱いた。
言葉を発しようとしたがなんといっていいかお互い判らずただ、暫くの間お互いの鼓動だけを聞いていた。
周りはざわついていたが、2人共聞こえてはいなかった。
「来てくれたんだ。」
「はい」
「有難う。こっち」
結人はグイグイと雅美の手を引いて人気のない方へと連れ出した。
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