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「2人のセットアップをしろ。」
監督が告げる。
「鈴音さんこちらへ、」
雅美は案内された方へと向う。
「こちらが今回の衣装になります。」
白い生地に淡い花がらがあしらった可愛いといった雰囲気の浴衣。
「昨日彼女が着た衣装が良いんですが。」
雅美はニコッと微笑む。
迫力が凄い。
スタイリストはその笑みに思わずたじろぐ。
「ねっ。その衣装が着たいんです。」
1歩詰め寄られるとスタイリストは真っ赤になり言われるままにその衣装を取り出す。
「こちらがその衣装です。3点新作がありまして、昨日アコが着た衣装です。」
「有難う御座います。じゃあ着替えしますね。和装は自分で着付けできるから誰か人が来ないようにしててもらえますか?」
雅美は再び微笑んだ。
「畏まりました。」
思わず敬語になる。
「有難う」
人気がなくなった個室で雅美は着物を脱ぎ終え、浴衣へと着替えをする。
その目には野心が込められていた。
「着替え終わりました。見張り有難う。」
真っ赤な浴衣に白い大きな花があしらわれた浴衣は、雅美の色白の肌に映え雅美をより美しくさせた。
黒い帯がアクセントになっている作り、まさにこの衣装は雅美の為につくられたのではないかと思われるほど、雅美に似合っていた。
スタイリストは思わず息を飲んだ。
「う。美しいです。」
「有難う。」
メイクも着物から浴衣に変えたことにより、浴衣に合うようなナチュラルなものにし直した雅美。
美しさの中にどこか可愛らしさが交えたその姿はとても魅力的に見えた。
「鈴音さん入ります」
スタッフがそう言うと雅美は堂々と撮影場所へと足を進める。
周囲が息を呑むのがわかる。
雅美はある一角に目を向ける。
そこには撮影をしているアコがいた。
目線を流し言葉には出さず威圧する。
自分がしたことを後悔するといい。
「鈴音。」
後ろから声がして雅美は振り返る。
「わぁー美人。凄い凄い似合ってる。着る人によってこんなにも変わるんだね」
結人の声はアコにも届いているだろう。
アコは気にする素振りを見せず撮影を続けていた。
流石プロだ。
「結人今日は浴衣黒なんですね。とても似合ってます」
「そうかな?鈴音がいうならそうだよね。」
2人が並ぶと周囲にどよめきがおきる。
「美男美女のカップルですね」
五十嵐はそう告げた。
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