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食べ終えた2人はお店を後にし歩き出す。
差し伸べられた手を雅美はキュッと握り返す。
「ねぇ。今度は仕事じゃなく来ようよ。秋の嵐山の紅葉きっと綺麗だろうな。」
「でもきっと凄い人ですよ。サイン攻めに合いそうですね。」
「それは困るな。ゆっくりデートできない」
結人は苦笑する。
「デートもいいけど一目気にせず、まったり家で過すほうが幸せな気がしてきた。今度休み取れたらベットでダラダラ過ごしたい。ねぇ良いだろ。」
結人の我が儘、雅美は小さく頷いた。
土産の前で結人は足を止める。
「ちょっと覗いてもいい?」
「はい。」
店内にはかんざしや、扇子、ハンカチ等の和飾りが並んでいる。
風鈴の音が心地よく鳴っている。
「いらっしゃいませ、なにかお探しですか?」
着物をきた女性が姿を表す。
「あっ。。結人」
思わず女性は声をあげ、ハッと周囲を見渡す。
幸い店内に客は2人を除いていなかった。
「ごめんなさい私、結人のファンで、ゆっくりご覧になってください。」
ペコペコと女性は頭を下げる。
「有り難う。」
結人はニコッと微笑むと女性は真っ赤になって慌ててその場から姿を隠した。
「結人」
雅美は小さく呟く。
「やきもち?」
しっかり結人には聞こえてたようで、ツンっとほっぺたを突かれてしまう。
「だって。。」
結人は僕のなのに。。とは言えず雅美は俯いてしまう。そんな雅美を知ってか知らずか、結人は店内でも雅美の手を握ったまま、物色する。
「これなんか似合うんじゃないかな」
結人はそう言うと、赤い花のかんざしを手に取り雅美の髪にさした。
「可愛い。これにしよう。すいませーん」
結人が店員を呼ぶと先程の女性が現れる。
「これプレゼント用に包んで、それからこれも」
結人は黒の扇子をレジに載せる。
「後このストラップ2つ頂戴」
結人は手早く買い物を済ませる。
「有り難うございました。あの写真を。」
女性が恥ずかしそうに告げる。
結人は雅美の顔をチラリ伺う。
「ごめんねプライベートだから、これで許して。」
結人はケースからあらかじめカードに書いてあるサインを手渡す。
本格的にモデルをし始めてからサインをお願いされる事が多くなってきたためだ。
「有り難うございます。ずっと応援してます。」
女性は嬉しそうに微笑んだ。
結人はギュッと雅美の手をきつく握った。
「俺には雅美だけだよ」
店を出ると耳元で結人は告げる。
そこから身体が痺れていくような感覚が襲う。
雅美の顔が真っ赤に染まっている。
結人は満足したように耳たぶを軽く噛んだ。
「あっ。。結人誰か見てたら」
雅美が慌てるのを見て結人はクスクスっと笑う。
「誰もいないよ。それに俺は見られても困らないけど。」
「僕殺されちゃいます。」
雅美の言葉に結人はハッとする。
「それはまずい。外では極力我慢する。」
名残り惜しそうに離れる結人の頬に雅美はチュっと一瞬触れるだけのキスをした。
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