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「ご馳走さま美味しかったよ。」
結人は手を合わせてそれから食器を片づける。
「僕がやります」
「いいよ座ってて、雅美も疲れてるだろ?稽古きつかったんじゃないの?」
授業の後、遅くまで稽古に励んでいた雅美だ疲れていないと言ったら嘘になる。
雅美は素直になれない従うことにした。
ちゃちゃっと片付けて結人は自分の分のレモネードを戻って来ると、再び雅美の隣りに座って段ボールを開封する。
中にはぎっしり雑誌が入っている。いったい何冊あるのだろうか。
結人は1冊を取り出すと雅美の写ったページを広げた。
「凄く綺麗だろ。」
「あ。。恥ずかしいです。」
浴衣美人とは雅美の事を言うのではないか。
そう思えるほどに雑誌の中の雅美は華麗で美しかった。
「僕のより栗原のを見たいです。」
「俺は雅美のを堪能したいんだけどな。仕方ないな。」
結人はペラペラと、最初からページをめくっていく。
結人のソロショット、あこのソロショット、そして結人とあこのツーショット。
「綺麗な人ですよね。」
思わず雅美の口からついて出た。
結人は目を丸くしている。
「雅美のタイプってこういう系?」
「えっ。」
そんな事があるはずないのに。
雅美は慌てふためく。
「世間一般的にですよ。」
冷静さを装いつげる。
「俺はこっちのほうがいいけど」
ぐいっと抱き寄せられて雅美の体制が崩れる。
そしてそのまま口付けられて雅美の身体から力が抜けていく。
「雅美が1番可愛くて綺麗だよ」
結人は恥ずかしげもなく思ったことを口にする。
雅美は小さく頷いた。
どこか嫉妬してた。
結人の隣に写る、あこは綺麗で男なら惹かれてもおかしくないだろう。
そして隣に写る結人の笑顔がまた自然で、本物の恋人同士と言われたら誰もが信じてしまうだろうと。
ただ隣に写っているだけなのに。
雅美の中に嫌悪感が生まれた瞬間、結人は見逃さなかった。
「俺のお気に入り」
そう言ってページをめくる。
そこには結人と雅美のツーショットがあった。
しっかりと握られた手。
本物の恋人同士の1枚。
雅美は雑誌を抱きしめた。
「これ1冊貰っていいですか?」
「良いけど雅美、どうせ抱きしめるなら、そんな雑誌なんかより俺にしてくれない?本人を前にそれはそれで妬けるんですけど。」
結人が不貞腐れたように笑う。
雅美が困ったような顔をする。
そんな姿も可愛くて結人は雑誌ごと雅美を強く抱きしめる。
「好きだよ雅美。」
「僕も好きです。」
それから2人はたんまりお互いを味わったあと、せっせとシールの仕分け作業に入るのだった。
FIN
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