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そうだ、異世界へ行こう!
ある日、私は思い立った。
そうだ、異世界へ行こう!と。
口うるさい上司、ガミガミ煩い会社のお局、何の役に立つかもわからない事務仕事、すし詰めでへとへとになる通勤電車、頑張っても大して入らない月給。退屈で面白味もなく、ただ疲れるばかりのくだらない毎日から脱却して、夢のような世界へ行こうではないか。
そう、きっと。私のように地道に頑張っていて、努力家で、本当はきっと何かの天才に違いない――そういう人間が輝ける素晴らしい世界があるはず!
嬉しいことに、異世界へ行ける方法というのがインターネットにいくつも載っていた。
特に最近若者の間で人気なのは、望んだ異世界へ行ける方法、というものである。
夜、魔法陣と、行きたい異世界の条件を書いた紙を枕の下へ入れて寝るだけでいいという。
そうすると、眠るようにその世界での人生を終え、そのまま望んだ異世界へ転生できるようになるというのだ。
「行くわよ!最高で最強な、イケメンに溺愛されまくる世界へ!」
私はその夜枕元に魔法陣と、細かな異世界の条件を書いた紙を入れて眠りについたのだった。
『以下の条件をすべて満たす世界に行きたいです。
①私がその世界で一番の美少女であること
②誰もが私の美貌にメロメロになること
③特に仕事をしなくても食べていけるような、裕福なお姫様のような家であること。ニートであっても家事をしなくても子育てしなくても咎められないこと
④私の邪魔をするめんどくさいライバルがいないこと
⑤特に何も頑張らなくても、私を溺愛してくれる、イケメンで性格が良くてモラハラしなくてお金があってちやほやしてくれて浮気も婚約破棄も絶対しない王子様とか貴族の男性が最低でも三人いること
⑥私を攫ってくれるイケメン魔王みたいな敵役がいること、その魔王からイケメンたちが助けてくれるお姫様的展開があること
⑦でも実は私が世界で最強の聖女で、どんな魔王も悪魔も天使も神様でさえも私に勝てないという設定にすること
⑧そのほか、私が望むことは基本的に何でも叶うこと
よろしくお願いします!!』
目を覚ましたら、最高で最強の異世界が私を待っている――はずだった。ところが。
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