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「……ちょっと待ってください」
「何ですか?私たち、急いでいるんです」
「どうして、そんな平然とした態度でいられるんですか?私は、あなたのせいで……」
諒ちゃんとの関係をどうするべきなのか、今もずっと悩み続けて苦しんでいる。
浮気をされた時点で別れを切り出せないのは、私が優柔不断なせいなのに、その責任までも彼女に押しつけようとしていた。
すると、彼女は諦めたように小さく溜息をつき、隣にいる彼氏らしき男性に声をかける。
「とも君ごめん。すぐに行くから、外で待っていてもらってもいいかな」
彼女が体を密着させて甘えるように乞うと、瞬時に鼻の下を伸ばした彼は、その願いを難なく聞き入れる。
彼女といるときの諒ちゃんも、こんな感じだったのかな……。
彼が店の外に出たのを目視すると、彼女は私を責め立てるような口調で、単刀直入に言ってきた。
「諒輔さんには、もう会わないって言われました」
「……」
「私たち、体の相性がすごく良かったんです。
諒輔さんも、あなたのことは大切にしているし相性も悪くはないけれど、セックスだけはマンネリだって言っていましたよ。
男を満足させられないなら、浮気をされるのは仕方のないことだと思いますけど」
愚弄するような言い方で、そんなことを赤裸々に告白してくる。
私の女としての価値を完全に見下すような冷たい瞳は、哀れみの感情すら含んでいるように思えた。
「私は別に、諒輔さんと付き合いたいわけじゃないんです。お互いに不満を解消するために利用し合う、それだけの関係でいいんです。それって、そんなに責められることですか?」
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