はじめてのデート

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その声にハッとさせられ、振り返ると怪訝な面持ちをした大和君が立っていた。 いつから彼がそこにいたのかは分からず、彼女との会話を聞かれてしまったかもしれないが、こんな痴情のもつれの当事者になってしまったことを知られたくはなかった。 同年代の人たちが平穏で幸せな家庭を築いているというのに、一体私は何をしているんだろう……。 あまりに惨めな自分が、痛々しくて仕方ない。 「……ううん、何でもないの。すぐに行くから席で待っていて」 そう言って、彼を巻き込まないように遠ざけようとしたけれど、彼女は大和君を一瞥した後に、わざと聞かせるような声で私を批判してくる。 「……諒輔さんのことは責めておいて、自分もちゃっかり他の男と遊んでいるじゃないですか」 「彼とはそういうのじゃないです……!あなたと一緒にしないで!」 つい声を上げてしまった私は、周囲の注目を浴びてしまい、気まずくて顔を俯けた。 結局、毅然とした態度を保つことはできず、逆に言いがかりをつけられる始末で、呼び止めてしまったことを深く後悔した。 「……月ちゃん、大丈夫?揉めていたみたいだけど……」 漸く席へと戻り、ドリンクを一口含んで気持ちを落ち着けたところで、前に座っていた大和君が心配そうに様子を窺ってくる。 単刀直入には訊いてはこないけれど、私が彼氏である諒ちゃんと同棲していたことは祖母から聞いているだろうし、そんな私が実家に戻ってきて同居を続けていることを、心のどこかで疑問に思っていたはずだ。 大和君はどんな些細なことも包み隠さずに、正直に話してくれるのに、私は今のままで本当に良いのかな……。
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