はじめてのデート

23/23
前へ
/431ページ
次へ
いつもは柔らかく穏やかな物言いをする大和君が、ここまで誰かを厳しく否定するような言葉を口にしたことに驚いた。 彼の正義感が所以なのか、それとも他に何か理由があるのかは分からないけれど、私を励ますために差し出された大きな手は、頭をそっと優しく撫でてくれる。 「……俺は月ちゃんの味方だから、俺でよかったら何でも話を聞くよ」 「……」 「月ちゃんが前に言ってくれたよね?苦しいことや辛いことは全部ぶつけていいよって。俺、あの言葉……すごく嬉しかった。 だから、俺も月ちゃんの苦しくて辛いこと、これからは全部受け止めていくよ」 そう言って、大和君は私の気持ちが落ち着くまで、何度も優しく撫でてくれると、子供の頃に祖母もこんな風によく頭を撫でてくれたことを思い出す。 そんな懐かしい記憶と、彼が向けてくれた実直な言葉に、ずっと目の奥で堪えていた熱が涙に変わって頬を伝う。 でもそれは悔しさや悲しさからくる涙ではなく、心を救ってくれるような温もりに触れたときに流れる、幸せで優しい涙だ。 「ふふっ……何だか、弟に慰めてもらっているみたい」 「月ちゃんが笑ってくれるなら、弟でも通行人Aでも、どんな役でも引き受けるよ」 そう言って、鞄からハンカチを取り出して丁寧に滴を拭ってくれると、大和君は得意げにニコッと笑う。 その瞬間、彼が側にいてくれて良かったと、心からそう思った。
/431ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2301人が本棚に入れています
本棚に追加