雨の日の出会い

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*** 壁の時計が午後6時を指し示し、私はデスクに置いてあった書類をファイルに片付け始める。 今日は週末ということもあって、体感的には普段の三割り増しで忙しかった。 それでも、無事に仕事を終えることができたので、躊躇なく白衣を脱いでいると、処置室から出てきた星野さんが私に気づいて声をかけてくる。 星野さんは同じ職場の先輩で、年齢は一回り以上離れているが、全く気を使わずに接することができる気さくな人だ。 「月ちゃん、今日は珍しく定時なのね」 「はい。たまには社畜を脱して、美味しいものでも買って帰ります」 白衣をロッカーに戻して、冗談混じりにそう答える。 今日は私にとって、残業をせずに早く帰るだけの価値がある、そんな特別な日だ。 すると、星野さんは冷蔵庫から取り出した缶コーヒーを口にしつつ、空いた方の手で一つにまとめていた髪をほどく。 「それはいいわね。せっかくの週末なんだから、彼とゆっくり過ごしなさいな」 「ありがとうございます。星野さんも残業はほどほどにして下さいね。優しい旦那さんと可愛い娘さんが待っているんですから」 「洗濯物一枚畳んでくれない旦那と、反抗期真っ只中の可愛げのない娘よ。仕事している方が、まだ精神衛生が守られるわ」 本気とも冗談とも捉えられる、そんな言葉を苦笑いで吐いた星野さんに、私も似たような表情で応えてみせる。 そして彼女に見送られながらタイムカードを切った。
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