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4階で降りて、部屋へ接近するにつれ、変な緊張感が漂う。
それは、週末は決まって残業の私がこんなに早く帰ってきたことに、諒ちゃんが一体どんな反応をするのかと期待しているから。
驚かせようと思うがあまりに逸る気持ちを抑えながらも、ゆっくりと鍵を回して玄関の扉を開けた。
普段なら必ず、中にいる諒ちゃんに向かって「ただいま」と言うけれど、今日だけは物音を立てないように静かに靴を脱ぐ。
しかしその瞬間、私は背筋の凍るような違和感を抱いた。
諒ちゃんの靴の横に並んでいた、私のものではない女性用の真っ赤なハイヒールのせいで。
それが、諒ちゃんが用意してくれた誕生日プレゼントだなんて、そんな楽観的な考えには至るはずもなかった。
踵が高めの赤いピンヒールなんて私の好みではないし、何よりもサイズが違っているから。
じゃあ、これは一体……誰のもの?
固唾を飲みながら部屋に足を踏み入れると、諒ちゃんがいるとばかり思っていたリビングには誰の姿もなかったが、開封されたワインボトルと飲みかけのワイングラスが二つ、テーブルの上に置かれている。
この状況を把握している間にも、隣の諒ちゃんの部屋からは微かな物音と、聞き覚えのない女性の喘ぎ声のようなものが聞こえてくる。
今の……動画とか、DVDの音声じゃないよね……?
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