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「これは、その……違うんだ!勢いっていうか、誘われてついっていうか……」
「……」
「それに……まだ挿れていないから、これは未遂だ!」
全裸で必死に取り繕おうとしている諒ちゃんを、私はきっと冷たい目で見ていたと思う。
それでも、彼を責め立てる陳腐な言葉を並べる気にもならない。
「……とりあえず、パンツくらい履けば?」
私がそう言うと、彼は申し訳なさそうに自分のパンツを探して握りしめたが、側にいた浮気相手の女性はそうじゃない。
まるでお楽しみを邪魔されたと言わんばかりに、不機嫌そうに唇を尖らせ、そそくさと服を着替え始めている。
人の彼氏を寝取っておいて、その態度はないんじゃないの……?
そう言いたかったけれど、私よりも随分と年下だと思われる彼女に威圧的な言葉を向けるのは稚拙な行動だと思って、その言葉を飲み込んだ。
「……あなたが、諒ちゃんを誘ったの?」
気持ちを落ち着かせるように静かに深呼吸をしてから、私は彼女に問いかけてみる。
しかし彼女は全く悪びれる様子もなく、ウエーブのかかった長い髪を手櫛で整えながら、面倒臭そうに淡々と答える。
「違いますよ。諒輔さんが、私のことを誘ったんです」
「……」
「あ、でも安心して下さい。私、ちゃんと本命の彼氏いるんで、諒輔さんとは単なるセフレですから」
その言葉に、後頭部を鈍器で殴られたような衝撃が走る。
真偽を確かめるつもりで諒ちゃんを見たが、彼は少しも否定せずに、ただ気まずそうに顔を俯けていた。
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