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翌日、祖母は朝から友達と観劇に行って留守だった。
私は大和君が帰ってくる時間に合わせて朝食を済ませて、その後片付けをしているところに、玄関先から彼の元気な声が聞こえてくる。
「月ちゃん、ただいま!」
帰宅を知らせる声に、私は洗い物を中断して、濡れた手をエプロンで拭いながら玄関まで彼を出迎えに行く。
まるで母親が、学校から帰ってきた子供にそうするように。
「あ、お帰り。朝ごはん食べるよね?」
「食べるよ。でも、先にシャワー浴びてきてもいい?」
「勿論。パン、焼いておくね」
「うん!ありがとう……!」
窓から差し込む、眩しく爽やかな朝日にすら劣らない満面の笑みが向けられ、私も自然と頬が綻ぶ。
彼が着替えを持って洗面所へ行き、ガサガサと物音を立てながら何かをしているのが遠くで聞こえてくる中、私は2枚の食パンにたっぷりとバターと蜂蜜を塗る。
大和君は、これがとてもお気に入りなのだ。
あとは甘めのコーヒーと、トマトを抜いたサラダを用意して、半熟の目玉焼きとベーコンでも焼こう。
月ちゃん、と呼ばれることにも慣れてきて、こんな朝の流れも、私たちにとっての日常になりつつある。
同居生活を始めて、もうすぐ2ヶ月が過ぎようとしていた。
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