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すると、大和君は恥ずかしそうしながら鼻下を指先で擦り、嬉しそうに口角を上げて白い歯を見せた。
「俺も、芳恵さん大好きだから嬉しい」
こんな言い方は良くないけれど、もし祖母が街中で躓いて捻挫をしていなかったら、助けてくれたのが別の誰かだったら、大和君とはこんな風に肩を並べて歩くこともなかっただろう。
何かの縁があって偶然出会った相手が、彼で良かったと心から思える。
「そう言ってくれると、私も嬉しいよ」
大和君と一緒にいると、いつだってとても優しい気持ちになれる。
彼にとって私は頼りないお姉さんかもしれないけれど、私にとって彼は側にいると心が落ち着く、そんな稀有な存在だ。
そんなことを考えていると、たまたま前方から歩きてきた、祖母と背格好の似た女性が、とても品のある綺麗な色のストールを首に巻いているのを見て、私はふと思いついた。
「……スカーフなんて、どうかな」
「スカーフ?」
「おばあちゃん冷え性だから、夏でも使えそうな薄手のやつ」
確か以前は、若草色のスカーフを時々巻いていた覚えがあるけれど、どこかで引っ掛けて破れてしまったようで、それ以来は気に入ったものに出会えていないはずだ。
私たちが二人で選んだと言えば、祖母はきっと喜んでくれると思うし、何よりも私は誰よりも祖母の趣味を把握している自信がある。
「スカーフか……うん、いいかも。やっぱり月ちゃんに相談して良かった」
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