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大袈裟なほどに賛同してくれた彼と、休憩を時々挟みながらも、思い当たる店を何軒か回った。
けれども、どの店にも即決できるほどピンとくるものはなくて、何の収穫もなしに午前中を終えようとしていた。
「大和君、疲れていない?」
「うん。今日は天気もいいし、こうやって歩いているだけでも楽しいから平気だよ」
これぞ、現役消防士の底知れぬ体力なのか……。
足が痛むわけではないけれど、時折立ち止まって、ふくらはぎを摩る私を見て、大和君は察したように声をかけてくれる。
「月ちゃん、そろそろお昼にしない?」
「えっ……?」
「この間、先輩に教えてもらったんだけど、近くに美味しいカレー屋さんがあるんだ。行ってみようよ」
疲れていないと言ったばかりなのに、明るい声でそう提案をしてくれる。
私に気を遣ってくれたんだろうと、そんなことは確認するまでもなく分かってしまった。
だったら私は、その優しさに甘えてみようと思う。
「……いいね、行ってみたい。連れて行ってくれる?」
「勿論だよ。ネパールだったかスリランカだったか忘れたけれど、そこ出身の店主が作る自家製のナンが凄く美味しくってさ。しかもお代わり自由で、先輩と行った時に7枚も食べちゃったよ」
「7枚って、凄いね!?」
「うん。先輩は9枚食べたから、店主も軽く引いていたよ」
現役消防士の底知れぬ食欲、侮れない……。
彼がうちの食事量で満足しているのか、やや心配になってくるところだ。
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