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目覚めると
目覚めると俺は小学生の、それも低学年のようだった。赤ん坊の時の記憶もかすかにあったが、いまはハッキリと意識があった。ああ、きょうは小学校の入学式だった。俺は真新しい服を着て、両親…それもすごく優しそうな人間に連れられて、広く明るい校舎のある小学校の体育館に入って行った。
幸せな六年間を過ごし、中学生になった。これも幸せだった。勉強もスポーツもそこそこでき、女子にもモテた。高校生になってからもそれは変わらず、毎日が幸せだった。大学は国立に受かり、まさに順風満帆の人生だ。こんなんでいいのか、と自問するときもあったが、これでいいのさと自答するくらい俺は満ち足りていた。
いよいよ就職だったが、これもさほど心配はしていなかった。すでに企業からの内定があり、就活と呼べるようなことはしなくて済んだ。
初出社の日がやって来た。俺は真新しいスーツを着込んでその企業に向かった。東証一部上場の優良企業だ。俺は18階にエレベーターで昇った。そこに俺の勤める部署があるのだ。すでにそこには三人の新入社員がいた。
あれ?これどこかで見た光景だ。俺は一瞬、そう思った。
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