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「今、玄関の鍵を開けますからね」
声と共にガチャッと解錠する音がした。
「履物を脱いでそのままお風呂場に行きますよ」
「えっ……。でも。びしょびしょで」
「何を言ってるんですか?あなたの今の状況をわかってますか?濡れた所は拭けばいいんです。気になるなら救急車呼びますよ!」
さっきまでの優しい声とは打って変わって、今度は怒られる。
「……。すみません」
素直に謝り、びしょびしょのままの女性について行く。
「お風呂は沸いていますので、身体の芯から温まるまでしっかり浸かって下さいね」
「はい……」
初対面の女性だが、叱られても嫌な気持ちには全くならない。むしろ心が温まる気がする。
今まで優等生で成長してきた匠にとって親以外から叱られることが新鮮で、目の前の女性が本気で心配をしてくれているのが身に沁みて伝わってきた。
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