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「肩をつかんでもらっていいので、頑張って歩いて下さい」
「ああ……。ありがとう」
返事の声は掠れ、ガタガタと震えている。とにかく倒れないように、早くお風呂に入ってもらって温めないと風邪を引いてしまう。私のなかで不思議な使命感が湧き上がって来ていた。
意識を失わないように、声をかけ続けて何とか部屋までたどり着いた。
「履物を脱いでそのままお風呂場に行きますよ」
「えっ、でも。びしょびしょで」
こんな状況で部屋が濡れることを気にしている男性に思わず叱ってしまった。普段から、子供達が悪いことをしたら怒るのではなく叱るのだ。男性に対してもそんな感覚で接していた。男性も素直にお風呂場に向かった。
和装は脱ぐのが大変だろうと少し時間が経ってから脱衣所に行くと、男性は几帳面な性格なのか、びしょびしょの着物が綺麗に畳まれて置いてある。
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