【改稿版】沈黙の戦い〜凛々しい棋士のギャップ〜

初対面

　扉を開けた途端に、いい匂いがしてきた。寒さで麻痺していたが、一気に空腹を感じる。

　『グゥ〜』と匠の身体から音が鳴った。

　お腹の音はキッチンにいた美羽にまで聞こえた。音を聞いて美羽が扉の方へ振り返る。

　初対面の瞬間だ――。

　匠は振り返った美羽を見て驚く。そこには声だけでなく見た目も天使な女性がいたのだ。

　美羽も振り返って驚く。

　そこには、長身のイケメンがいたのだ。美羽の弟の黒のスウェットが、長身の彼には若干短めでダサイはずなのだが、その姿が彼の手足の長さを強調している。年齢は美羽より歳下に見えるが、凛々しく整った容姿が眩しい。

　お互いに『ポカン』と魅入ってしまう。

「あの〜、ご迷惑をお掛けしました。親切にしていただきありがとうございます」
「あっ、体調はどうですか？病院に行かなくて大丈夫ですか？」
「は、はい」
「良かった」