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「鶏雑炊を作ったんですが食べられそうですか?」
「何から何まですみません。正直、すごくお腹が減ってます」
「じゃあ、一緒に食べましょう。そこへ座って下さい」
「はい」
匠のなかでは、美羽は天使にしか見えない。
自分が肩を貸してもらった相手が、こんなに小柄で可愛らしい人だったとは全く気づかないくらい朦朧としていたのだ。ぱっちりの二重の目に、微笑むとえくぼが愛らしい。
「どうぞ」
「いただきます」
ダイニングテーブルに向かい合って座り温かい雑炊を食べる。
「美味しい……」
匠がポツリと呟く。
一人暮らしを始めてから少しは自炊をする匠だが、まだまだ料理は初心者だ。久しぶりに食べる家庭の味はお腹だけではなく心まで満たされる。ふわふわの卵とネギがたっぷり入った鶏ガラスープのシンプルな雑炊だが、今の匠には何よりも有難い優しく温かい味だ。
「おかわりありますよ」
「じゃあ、少しだけいただいてもいいですか?」
「もちろんです」
美羽の優しい言葉に思わず涙が溢れそうになった。
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