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三時間目の授業中、漢字の問題が書かれた黒板の前を、半透明の影が通り過ぎていく。
だがオレは驚かない。だって今朝からずっとだからな。
なんと、本当に来てしまったのだ、幽霊が!
オレは全然怖くなかった。むしろちょっとワクワクしていた。
自分の身に、こんな怪奇現象が起こるなんて!
「緋坂くん、この漢字の読み、わかるかしら」
国語を担当している月岡先生が、優雅な笑みを浮かべて黒板を指さしていた。彼女の真っ黒な長い髪は、今日も手入れが行き届いている。
黒板に答えを書きに行くオレを、なぜか青宮が鋭い目で見ていた。
「神社ラビリンス」の呪いにかかってしまったのを、オレは仲間たちに秘密にすることにした。
雅人がショックで倒れかねないし、クリアできなかったのを知られたくなかったからだ。
オレは早めに家に帰ってきた。
「おかえり、アキト!」
「ただいま、母ちゃん!」
母ちゃんと、ぱちんとハイタッチする。
オレたちの間を影が通り過ぎていったが、母ちゃんには見えていないようだ。
「アキト、キミにミッションを授ける。このメモのものを、よつばスーパーで買ってくるのだ」
「はいはい」
「こういうときは『はいはい』じゃなく、『ラジャー!』だよ!」
オレの母ちゃんの名前は、緋坂美緒里。お仕事は、雑誌のライターだ。映画の評論を書いている。
アクション映画が好きすぎて、よくオレに「ミッション」を与える。
「このお財布に必要な分のお金が入っている。少し余るから、寄り道してくるといい」
何だか母ちゃん、機嫌がいいみたい。原稿がよく進んだのかな。
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