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判例にはその手のものはたくさんあり、司法試験の段階からわかっていた話である。しかし、実際に面と向かって対峙するとなると、結構しんどかった。また、自分に恋愛経験がないため、いまひとつピンと来なくて、依頼人に対して適切な言葉が見つからない。
「だから、俺がトレーニングしてあげる。レイナに」
「なんですか、それ?」
ちょうどその時だった。レイナに寒気が走ったのは。
鳥肌が立ち、肩が震えた。
「レイナ、寒い?大丈夫?」
「ごめんなさい。プールなんて久しぶりなんで、冷えちゃったみたいです。もう上がります」
「ダメ」
プールサイドに指をかけて、上体を引き上げようとしたレイナを、藤川が後ろから抱え込んだ。
「何するんですか?風邪ひきたくないんです。出させてください」
「大丈夫。俺があっためるから」
背中に藤川の胸が張り付くのを感じた。その素肌から熱が伝わる。
「すっごい恥ずかしいんで、やめて欲しいんですけど」
「周り見てみな。いちゃついてるヤツら、いっぱいいるよ」
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